阿蘇のジオサイト紹介

12.阿蘇谷湧泉群ジオサイト

宮地・役犬原地区湧水群

 カルデラ内の火山群(中央火口丘群)の北東の裾野にあたる宮地(みやぢ)地区と役犬原(やくいんばる)地区にかけての一帯には、いたる所に地下水が地表より高くまで湧き上がる湧水(自噴水)があります。これは中央火口丘群に降った雨水が地下深く浸透し、圧力の高い地下水として噴き出してくるからです。自噴水の高さは最大2m程にもおよび、地元では古くから生活用水や農業用水として利用されています。門前町商店街では湧水を“水基”と呼んで、街づくりに活用されています。

阿蘇谷にある主な自噴域(熊本県, 1993より作成)

図1 阿蘇谷にある主な自噴域(熊本県,1993より作成)

図2 役犬原の自噴泉

図3 宮地の湧水(水基)

図4 宮地の湧水(水基)

扇状地と被圧地下水

 この地域は、中央火口丘群から流れ下る川が繰り返し氾濫して土砂が堆積することによって形成された扇状地となっています。中央火口丘群に降った雨水は地下深くに浸透し、扇状地を伏流した後に地表に湧き出してきます。この時、湧き水は高い圧力がかかったまま地表に出てくるため、勢いよく噴き出します。こういった湧水を自噴泉、そのもととなる地下水を、圧力を被るという意味で「被圧地下水」といいます。

図5 阿蘇谷東部の南北方向の推定地質断面図(田中,2000より作成)